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2022.04.25

歯髄(歯の神経)はなぜ残すべきなのか?

歯の神経とは?


歯の構造は3層になっています。
一番外にある最も固い層はエナメル質、その下の2番目に象牙質があり、3番目の中心部にいわゆる「神経」があります。

一般に「神経」といわれますが、この部分は「歯髄」と言って動静脈の血管と一緒に走行しています。この血管の中を流れる血液の流れによって歯は生きているのです。

また、この血流によって象牙質の中にも免疫細胞をいきわたらせることができるので、細菌感染から歯を守ることができます。そして、この歯髄の中に含まれる「神経」はセンサーの役割をしています。

虫歯になったり、不正なかみ合わせになっていたりすると、痛みや違和感を感じて異常を知らせてくれます。この神経のセンサーのお陰で早期発見、早期治療が可能となって歯の寿命を延ばすことができるのです。

歯の神経を失うとどうなるのか?

神経を含む歯髄に流れる血液の流れは、私たちの全身に流れる血流と同じで、もしもこの血流が無くなってしまうと歯は死んでしまいます。

神経を取ることは、歯髄全部を取ることになるので同時に血管も取ることになります。そうすると、血流が無くなるので死んだ状態になってしまいます。だから、この神経をとった歯のことを「死歯」といいます。人間でいうと「ミイラ」のような状態です。

歯としては死んでいるのですが、歯の根の部分を「歯根膜」という靭帯が覆っていて、この「歯根膜」のおかげで抜かずに使うことができます。

しかし、歯は死んでいるので枯れ木のように非常にもろくなってしまっていて、大きな咬合力がかかる奥歯では割れてしまうことが多くなります。

ですから、神経をとった歯はできるだけ割れないように、歯と一体になってたわんでくれる土台を入れて全体を覆うかぶせ(クラウン)をします。

ところが、補強のためにかぶせをしてもやはり割れてしまうこともあります。特にブリッジにして大きな負担がかかると割れてしまうことが多いです。

歯が割れるというのは、歯にとっては終末の段階なので抜歯をせざるを得なくなります。

根尖病変のリスク

神経(歯髄)をとった歯は、血流が無くなっているので免疫力がゼロになってしまっていて、感染に対しての防護力が全くありません。ですから、いったん歯の中に細菌が侵入してしまうと、どんどん細菌が増殖してしまいます。

細菌感染が進行すると、死んだ歯の中で増殖した細菌が根の先にあふれ出してきます。やがて根の先に膿がたまってきていわゆる「根尖病変」となります。

つまり、根尖病変の状態になってしまった歯は全体が細菌に感染しています。言い換えるとその歯は「腐った」状態になっているのです。腐ったものが口の中に刺さっている状態をイメージしてください。

そのような腐った歯では神経(歯髄)の中はもちろん、象牙細管の中にまで細菌がどんどん増殖してきている状態になっています。象牙細管の総延長の長さは前歯で5㎞、奥歯になると15㎞にもなります。このすごく長い象牙細管の中が細菌でびっしり埋まっている状態です。

この大量の細菌を完全にゼロにすることはできません。このように感染した歯では、根の治療をした結果、たとえうまくいって痛みが無くなったり、レントゲン上で根尖病変が無くなっても無菌状態には決してなりえないのです。つまり、慢性的な細菌感染状態が体の中で永遠に持続することになります。

この慢性的に感染した状態は全身の健康にとって非常に大きな悪影響があります。歯の内部で増殖する最近の毒性は歯周病菌よりかなり強いので要注意です。様々な病気と関係がありますが、とくに強い因果関係があるのは、がん、心血管疾患、糖尿病、認知症です。

このような歯の内部の感染は外から見てもわかりませんし、体感もないのでほとんど気付かずに進行していきます。この「隠れたリスク」が、神経を取ることによって引き起こされる最大の問題です。

また、神経が無い歯はセンサーが無くなっているので、むし歯などの異常が発生しても痛みを感じることがなく気づかずに進行してしまいます。
歯がかけたり割れたりしてはじめて気づいて来院されます。
しかし、その段階になってしまうと虫歯はかなり進んでしまっていて抜歯になることも多いです。

それから、神経をとった歯は血流が無くなって死んでしまうので変色してきます。特に前歯で変色すると患者さんは気になるので治療を希望されます。

歯の神経を保存する重要性
歯の神経を残すことができれば、歯の寿命を延ばすことができます。歯を失うことで次のようなリスクが高まることが分かっています。

歯の神経を保存する重要性

歯が少なくてよく噛めない人は、脳卒中・心筋梗塞や肺炎による死亡の危険性が、それぞれ80%以上高まる
歯を失って義歯を使わなければ、認知症のリスクが最大1.9倍に高まる
歯を失って義歯を使わなければ、転倒のリスクが2.5倍に高まる
また、かかりつけ歯科医師があるほうが生存率が高まることが分かっています(逆に意外なことに、かかりつけ医師がいるほうが生存率が低い)。
歯を含めたお口の健康は全身の健康と大きく関係しており、健康で長生きするためにはお口の健康を保持・増進することが大切なのです。
そのためにも、歯の寿命を短くする「神経を取る治療」にはできるだけならないようにすることが重要となります。

歯の神経を保存するために

では歯の神経を保存するためにはどうすればいいのでしょうか?
そのためには次の3つが大切です。

早期発見・早期治療

できるだけ早期に虫歯を見つけて治療することが大切です。少しでも早めにむし歯を見つけることができれば、それだけ神経への感染を最小限にすることができるので神経を残せる可能性が高まります。そのためにも定期検診が欠かせません。

虫歯治療
予防歯科

虫歯菌を徹底的に除菌する

虫歯菌はとても小さくてもちろん、肉眼では見えません。むし歯の部分を削って詰めるだけでは虫歯菌は残ってしまいます。虫歯菌が残ってしまうと、後々虫歯の再発がしやすくなります。

当院では・・・・

象牙細管内に感染した虫歯菌をオゾンガスで殺菌したあと、さらに半永久的に殺菌効果が持続するドックスベストセメントを使って殺菌します。抗生物質を調合したお薬を使うこともあります。

その他、器具の滅菌は当然ですが治療で使用する水が無菌であることも重要です。当院では治療水は次亜塩素酸水を使用しており、除菌しながら治療できるシステムにしております。

口腔除菌療法
ドックスベストセメント法

再発を防ぐ

劣化しやすい材料で治療すると、治療後数年たった時にすき間ができて虫歯菌が入ってきて感染することがあります。日本の保険で治療した歯は、治療後年数が経ったケースではほとんど感染を起こしています。

当院では・・・・

ジルコニアやセラミックを高性能なセメントで接着して修復します。そして、段差ができやすい修復物と歯に間に段差ができないような処置を施し、さらに新たな虫歯ができないようにするために、残存歯質の部分に歯質強化の処置も行っております。上記の治療をすべてマイクロスコープという歯科用の顕微鏡を使って、約10-20倍に拡大して見ながら精密な治療をしています。

患者様へのメッセージ

かかりつけの歯科医院で虫歯が見つかって「神経を取らないといけない」と言われて、何とか神経を残せないかと思い当院のHPをご覧になって来院される方が多くいらっしゃいます。
神経が大きく感染し壊死してきているような進行した場合は、神経を取らないといけませんが、ほとんどのケースでは神経を残すことができます。
神経をできるだけ残すことは、歯の寿命を長くすることになるだけではなく、健康で長生きすることにもつながっていくのでとても大切なことです。
「できるだけ神経を残す虫歯治療」をお望みの方やご検討される方は、是非当院へ一度ご相談ください。

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