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2023.10.16

歯科の注意すべき「金属アレルギー」と「メタルフリー治療」について

Low-quality metal. Young lady looking sore and unwell while holding on to her low-quality necklace causing her skin have allergic response

当院では、金属アレルギーでお悩みの方に対しても安心・安全に歯科治療が受けられるように、さまざまな工夫を凝らして治療を行っております。

ただ中には自分が金属アレルギーかどうかもわからない方も多くいらっしゃることでしょう。今回、そういった方々に向けて

  • 金属アレルギーとは何か
  • 金属アレルギーがあると歯科治療にどのような影響が考えられるか
  • 金属アレルギーが歯科においてどれくらいあるか
  • 金属アレルギーの方にも有効な「メタルフリー」歯科治療について

それぞれわかりやすくご案内いたします。

金属アレルギーとは

金属アレルギーとは、「特定の金属と皮膚が接触した際に発生するアレルギー反応のこと」です。具体的には、金属が体内のタンパク質と結合することでアレルギー反応を引き起こし、「かぶれ」や「かゆみ」などの症状を引き起こします。

金属アレルギーの主な症状は以下の2つ。

接触性皮膚炎

多くの場合は「接触性皮膚炎」といって、金属製のピアス、指輪、ベルトのバックルなどが接触する皮膚部位に小さな丘疹(ふくらみ)や紅斑(赤み)が現れて、通常かゆみを伴います。

全身性金属アレルギー

しかし時々「全身性金属アレルギー」といって、金属粉塵を吸入したり、食事や歯科金属から金属を摂取すると、全身にかゆみや紅斑が出現することがあります。

このような場合はなかなか症状を抑えるのに難渋するほか、中にはのどのかゆみや息苦しさまで感じる人も。金属アレルギーは全身の体の不調にもかかわる、気を付けなければならない疾患の1つです。

歯科における金属アレルギーの問題点

では、歯科領域において金属アレルギーの可能性を放置してしまうと、どのような問題点が生じるのでしょうか。主な問題点は以下の通りです。

かゆみや発疹がでて生活に支障が生じる事がある

特に歯のクラウン(冠、かぶせ)や詰め物に使用されている金属に金属アレルギーがある場合、口の中や唇に小さな赤いブツブツが出ることがよくあります。

これらのブツブツは通常、強い違和感をあたえ、水ぶくれができる場合もあります。このようなアレルギー症状がでると、生活にかなりの支障を与えてしまうでしょう。

今後の治療にも影響がでてくる

歯の金属材料にアレルギーがあると、さまざまな歯のトラブルに見舞われやすくなります。そのため、そのアレルギー反応の対処により通常よりも高い治療費がかかる必要が出てきてしまうかもしれません。

さらに、アレルギー科などの受診などもかさみ、特に長期的な治療が必要な場合に大きな負担となってくるでしょう。

また金属アレルギーは、長期間にわたって他の形で体に影響を与える可能性があります。慢性的な炎症や口内炎を引き起こすことがあり、これが口腔内の他の疾患につながる可能性も引き起こしてしまうのです。

当事者・医療従事者の「情報不足」はさらなる支障を引き起こす

また、金属アレルギーかどうかが分かっていないと、もしかすると「さらなる問題」を引き起こしてしまうかもしれません。

例えば、金属アレルギーの症状は、しばしば他の口腔内疾患と似ています。これにより、診断が遅れる場合があり、適切な治療が遅れるリスクがあるでしょう。

また、同じ種類の金属を簡単に使用してしまうと、もっと重い症状を引き起こす可能性もあります。当然ながら、原因がわからないと早期の診断と治療が進まず、症状が悪化する可能性があります。

特に、歯の治療で金属を使用していながら、ネックレスや他の形でアレルギーに該当する金属を使用してしまうとかなり重い症状になってしまうことでしょう。

このように、歯科の治療において、金属アレルギーの問題を無視してしまうと、非常に多くのトラブルを抱えてしまう可能性があるのです。

日本の歯科における金属アレルギーの現状は?

では、日本の歯科における金属アレルギーの現状はどのようになっているのでしょうか。最新の論文を1つご紹介いたしましょう。

この研究では、2006年から2016年の間に歯科インプラント手術を受ける予定だった300人を含む1,225人の患者(男女比1:3、平均年齢53.0±16.5歳)の歯科金属アレルギーを分析しました。

これらのうち、実際にインプラント手術をしていない925例での解析の結果、約半数である44.0%が何らかの金属に対して陽性反応を示したのです。

具体的な数字で言うと、ニッケルに対する陽性率は22.5%、パラジウムは14.8%、そして亜鉛は11.5%という結果でした。

また、42.3%が他の「何らかの症状」を示しています。最も一般的な口内疾患は口腔扁平苔癬(11.5%)、次いで口内炎(4.3%)でした。これらの他の症状は、「口内だけでなく全身の皮膚にも影響を与えることがある」としています。

結局陽性反応を示した患者のうち、55.6%が金属を除去する治療を受け、症状が改善されましたています。

また、同論文ではインプラント手術を予定している300人の患者の中で、2.7%がチタンに対して陽性反応を示しました。チタンは通常、アレルギーを引き起こさないとされていますが、この研究によれば、チタンに対するアレルギーも存在する可能性があることをしてきしています。

みなさんの中には
「金属アレルギーは私には関係ない」
「チタンだったらアレルギー反応は起こさない」
と思われている方もいるかもしれませんが、そうではありません。一度は金属アレルギー検査をうけてみるとよいでしょう。

(参照:Current status of dental metal allergy in Japan. Journal of Prosthodontic Research. Volume 63, Issue 3, July 2019, Pages 309-312. )

金属アレルギーが疑わしい方は「メタルフリー」の歯科治療を

日本の臨床研究でもわかっている、意外と多い金属アレルギー問題。その解決策として「メタルフリー」の歯科治療が注目されています。この治療法は、金属を一切使用しないため、アレルギー反応を引き起こすリスクが極めて低いのです。

よく「メタルフリー治療」の素材として使われているのは、セラミックやプラスチックが多いですが、当院は加えて「ジルコニア」も素材として取り扱いがあります。ジルコニアも生体親和性が高く、金属が体に与える影響を気にする必要がありません。

自然な色合いで、見た目も自然ですし、なによりダイヤモンドに近い硬度なので非常に長持ちします。

もちろん、セラミックやジルコニアなどの素材は金属よりも高価ですし、どこでもできる治療ではありません。メタルフリー治療を得意とする歯科医を選ぶことが重要です。

しかし、金属アレルギーの方には、メタルフリーの歯科治療が最適な選択肢と言えるでしょう。費用はやや高めですが、長期的な安全性と美観性を考慮すると、その価値は十分にあります。

特にアレルギー体質の方にとっては、ぜひおすすめしたい治療法です。

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