ブログ

2023.12.14

保険の銀歯で使用するパラジウム合金と金属アレルギー

銀歯でよく使う「パラジウム合金」。非常に使いやすい金属の1つですが、実はアレルギーを含めて人体に様々な影響がある可能性があることを知っていますか?

今回は、金属アレルギーを中心に、パラジウム合金と人体への影響について解説していきます。

パラジウム合金とは?

「パラジウム合金」とは、「金:12%、パラジウム:20%、銀:約50%、銅:約10%、その他の金属(亜鉛、インジウム、錫)」で構成される合金のこと。

その割合を微調整すると様々なタイプの「パラジウム合金」がありますが、大まかな組成は変わらず、主に「銀」が主成分であることがわかります。

一般的に歯科治療で保険適応での銀歯や銀の詰め物で使われているのは、この「パラジウム合金」です。

パラジウム合金は、軽くて柔らかく加工しやすい金属でありながら、錆びにくく化学的に安定しているため、非常に汎用性の高い金属です。

そのため、美しい色とその安定性から指輪やネックレス、歯の詰め物やクラウンにも使用されています。

保険適応の銀歯で「パラジウム合金」が使われている理由は?

なぜ「銀歯」と言っているのに、パラジウム合金が保険適応の銀歯として使われているのでしょうか?

銀が単純に使われないのは、「銀のみで使用すると腐食しやすい」から。銀のネックレスなど持っている方はわかると思いますが、酸化してすぐ黒く変色し、もろくなってしまうため、単純な銀では長期間の歯の使用に耐えられないのです。

そのため、長らく「アマルガム」という水銀と他の金属との合金が使われたりもしました。しかし、このアマルガムも水銀が時間の経過とともに体内に蓄積し、健康被害につながると不安視する声が上がり、2016年には保険適応から外れました。

そのような紆余曲折の中、現在は銀の強度を高めるために金とパラジウムが混ぜられた「歯科用金銀パラジウム合金」が「保険適応の銀歯」として使われるようになりました。

実際、パラジウム合金は強度が高く割れにくい性質があるので、噛む機能回復も見込めます。また保険診療の適応内で修復できるため、治療費を安くおさえたい場合は、強度の高く安価なパラジウム合金が選択されるでしょう。

パラジウム合金に潜む「金属アレルギー」のリスク

しかし、「保険適応の銀歯だから安心」というと、そういうわけではありません。高い強度と安定性をもつパラジウム合金にも様々な健康リスクがあることが指摘されているのです。

その1つが「金属アレルギー」へのリスクです。

金属アレルギーとは、特定の金属に対する免疫系の過敏反応のこと。溶け出した金属イオンが皮膚や粘膜から体内に侵入し、自己タンパク質と結合してアレルギー反応を引き起こすといわれています。

そして、日本の1,225人にも及ぶ歯科インプラント手術を受ける予定の患者さんに対して金属アレルギー検査をしたところ、パラジウムに対してアレルギー反応を示した人は14.8%もいたのです。

さらに、東北大学加齢医学研究所の研究により、パラジウムによる金属アレルギー誘導機構として、以下のことまでわかってきています。

  • パラジウムを含む歯科金属による治療をする。
    口内でパラジウムが溶け出し、皮膚に浸透し、樹状細胞がパラジウムにさらされる。
    「MHC I」というタンパク質 が細胞内に輸送され、病原ペプチドに置きかわる。
    アレルギーに関わるT細胞が活性化される。
    パラジウムアレルギーが発症する。

このようにパラジウムによる金属アレルギーは単なる「気のせい」ではなく、きちんとしたメカニズムまでわかっている、「証明された事実」なのです。

(参照:Current status of dental metal allergy in Japan. Journal of Prosthodontic Research. Volume 63, Issue 3, July 2019, Pages 309-312. )
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1883195818301920?via%3Dihub

(参照:Palladium-Induced Temporal Internalization of MHC Class I Contributes to T Cell-Mediated Antigenicity.Front. Immunol., 23 December 2021 )
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2021.736936/full

さらに、パラジウムアレルギーによる「掌蹠膿疱症」の問題も

「金属アレルギー」というと、なんとなく「かぶれ」を想像するかもしれませんが、かぶれだけではありません。全身に生じる場合もありますし、「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」という特殊な疾患を生じることもあります。

掌蹠とは「手のひらと足の裏」のこと、膿疱とは「膿のたまった水ぶくれ」のこと。つまり掌蹠膿疱症とは、「手のひらや足の裏に原曲して、膿のような水ぶくれが繰り返すような疾患」のことを指します。

想像してみてください。急に手や足の裏が荒れて、ガサガサになりただれるようになってくる。そして、猛烈なかゆみが生じてきて、皮膚科で治療を受けると一時的にはよくなるけど、また繰り返してしまいどうしようもなくなる・・・非常に辛い疾患ですよね。

このように、掌蹠膿疱症は通常の湿疹よりも炎症が非常に強くなりやすく難治性なのが特徴ですが、原因物質をやめれば比較的治まりやすいのも特徴です。

一番多い原因は「タバコ」ですが、金属アレルギーも「掌蹠膿疱症」の原因として非常に有名であり、掌蹠膿疱症の方は金属アレルギーの原因を調べることもよく行われます。

この数ある原因のうち、パラジウムアレルギーもいわれており、日本皮膚科学会でも

海外での報告は少ないのですが、日本では歯科金属(パラジウムなど)に対するアレルギーが引き金となり掌蹠膿疱症が発症した事例が報告されています。病巣感染がないのに治りにくい場合や、金属アレルギーが疑われる場合は、パッチテスト(疑われる金属を実際に皮膚に貼り皮膚反応があるかどうか調べる検査)を受けて下さい。

と勧告を出しているほどです。そう考えると、病気を抱えるリスクがある金属を「保険適応で安いから」という理由で使うのに、違和感を覚えませんか?

(参照:日本皮膚科学会 「掌蹠膿疱症:金属が悪さをして出ることもあるようですが、ほんとうですか?」)
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa27/qa04.html
(参照:Palmoplantar Pustulosis: A Case Report. Clin Pract Cases Emerg Med. 2020 Nov; 4(4): 664–667.)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7676767/

金属アレルギーの心配な方は「メタルフリー歯科治療」への検討を

こうしたパラジウム合金の「金属アレルギー問題」を受けて、今さまざまな代替歯科治療が模索されています。その1つが、金属を一切使わずアレルギーのリスクを大幅に減らす「メタルフリー歯科治療」です。

メタルフリー歯科治療では、主にセラミックやプラスチック、そして特に「ジルコニア」という素材が使われます。ジルコニアは体との相性が良く、金属のようなアレルギーを中心とした副作用の心配がありません。さらに、自然な見た目とダイヤモンドのような硬さを持ち、長持ちする利点もあります。

ただし、セラミックやジルコニアは金属よりもコストが高く、専門の技術が必要です。そのため、メタルフリー歯科治療を専門とする歯科医を選ぶことが大切です。

もともと金属アレルギーを持つ方や金属アレルギーが心配な方は、この「メタルフリー歯科治療」が特に適しています。確かに初期費用は高いですが、見た目の美しさや安全性を長期的に考えれば、その価値は十分にあると言えます。

万が一金属アレルギーになった場合の時間と治療費用を考えると、「予防費用」として検討してもよいのではないでしょうか。

アレルギーをお持ちの方は、ぜひ「メタルフリー歯科治療」をご検討ください。もちろんそれ以外の方でもメタルフリー歯科治療にご興味がある方はぜひご相談いただけますと幸いです。

expand_less
お電話でのお問い合わせ 078-231-1115 Web予約 TOPへ戻る メールでのお問い合わせ